
豊川稲荷(妙厳寺)
愛知の東、豊川の町に、日本でも名高い稲荷のひとつが鎮まります。名は稲荷でも、じつは神社ではなく、曹洞宗の禅寺。1441年(嘉吉元年)に開かれた妙厳寺です。山門には、白い狐にまたがる姿で表される守り神・豊川吒枳尼真天が祀られ、その白い狐が、商売繁盛と福徳をもたらす稲荷の信仰と結びついて、寺は「豊川稲荷」と呼ばれるようになりました。伽藍の奥には、千体を超える石の狐がならぶ霊狐塚。門前には、名物の稲荷寿司を商う店がつづきます。趣きがあり、祭りの日はにぎわい、通年で参拝できます。
訪問を計画する愛知の東、その名を町の名とする豊川に、日本でも名高い稲荷のひとつが鎮まります。けれども、これはよく誤解されるお参りどころでもあります。赤い幟がはためき、狐の像がならんでいても、じつは神社ではまったくなく、曹洞宗の禅寺——正しくは妙厳寺というのです。1441年(嘉吉元年)に開かれ、年間およそ五百万人が訪れます。その多くは商売繁盛と福徳を願い、そのあと石の狐の塚と、山門へつづくいなり寿司の古い門前町を歩いていきます。
神社と呼ばれる、寺
誤解のもとは、じつは単純です。東海義易和尚が1441年に妙厳寺を開いたとき、その中心に千手観音を安置し、山門には守り神として、みずからの法系の先師・寒巌義尹の手になる像から、豊川吒枳尼真天を祀りました。この守り神は仏の神ですが、白い狐にまたがる姿で表されます。そして狐は稲荷——米と豊作と繁栄を願う民間の信仰——の動物でした。長い年月のうちに二つは重なり合い、江戸の商人たちがその名を各地へ運び、寺はだれもが呼ぶ「豊川稲荷」となったのです。日本三大稲荷のひとつに数えられますが、あとの二つがどこかは資料によって異なります。境内でいちばん古い建物は1536年の山門で、武将・今川義元の寄進と伝わります。大きな本殿は1930年の完成です。

千体の狐がならぶ霊狐塚
多くの人が心に残すのは、本殿の奥、木立を抜けた先の眺めです。ここが霊狐塚。願いのかなった参拝者が一体ずつ、長い年月をかけて奉納してきた、千体を超える石の狐がならびます。大小さまざまに、苔むして座り、なかには巻物や鍵をくわえたものもあり、描かれた目はとうに褪せています——狐は神そのものではなく、そのお使いだからです。これだけの数がひとつの静かな窪地に集うさまは、言葉にしにくく、けれど忘れがたい。歩きまわるのに、お金はかかりません。

いなり寿司の門前町
山門へ向かう参道は門前町で、ゆっくり歩く値打ちがあります。店や露店が参道にならび、食べたいのは名物の豊川いなり寿司——甘く煮た油揚げに酢飯をつめた、神さまと同じ名をもつ一品が、ここではさまざまに商われています。何かを買って歩きながら食べ、工芸や菓子を眺め、旅の足どりをゆるめる——そんな、いそがない通りです。
知っておきたいこと
総門は早くから開き、境内は夕方まで開いていますが、本殿や奥の院は昼をはさんでそれより短い時間なので、遅い時間に訪れる前には時刻を確かめておくとよいでしょう。拝観は無料。ご祈祷は別途受け付けで、寺の近くには有料駐車場があります。豊川稲荷がいちばんにぎわうのは正月——初詣に大勢が訪れ、ふだんの朝は静かです。電車で気軽に立ち寄れ、名古屋から豊橋を経て飯田線で向かうJR豊川駅、または名鉄豊川稲荷駅から、いずれも徒歩約5分。名古屋に近いもうひとつの静かな聖域としては熱田神宮を、6月には、同じ愛知の東・蒲郡の丘に咲く形原温泉あじさいの里を、あわせて訪ねるのによく合います。
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見どころ
神社ではなく、寺
赤い幟や狐の像がならびますが、豊川稲荷は神社ではなく、曹洞宗の禅寺・妙厳寺です。1441年(嘉吉元年)の創建で、御本尊は千手観音。
豊川吒枳尼真天と白い狐
山門には守り神・豊川吒枳尼真天が祀られ、白い狐にまたがる姿で表されます。その狐ゆえに、この神は長い年月のうちに、豊作と福徳を願う稲荷の信仰と重ねられ、寺は「豊川稲荷」の名で親しまれてきました。
千体の狐がならぶ霊狐塚
伽藍の奥に霊狐塚があります。願いのかなった参拝者が長い年月をかけて奉納した、千体を超える石の狐が、木立のなかに苔むしてならびます。狐は神ではなく、そのお使い。これだけの数が集うさまは、静かで、ふしぎです。
いなり寿司の門前町
山門へ向かう参道は門前町。店や露店がならび、名物は豊川いなり寿司——甘く煮た油揚げに酢飯をつめた、神さまと同じ名をもつ一品を、歩きながら味わえます。
日本三大稲荷のひとつ・通年
豊川稲荷は日本三大稲荷のひとつに数えられ、年間およそ五百万人が参拝します。いちばんにぎわうのは正月の初詣。ふだんの朝は静かで、特定の旬はありません。
おすすめのまわり方
- 1
総門と山門
総門をくぐり、寺でいちばん古い建物である山門を抜けて、大きな本殿へ。
- 2
本殿
境内の中心、1930年に建てられた本殿で、神さまにお参りを。
- 3
霊狐塚
伽藍の奥へと道をたどり、木立のなかに千体を超える石の狐がならぶ塚へ。
- 4
門前の通り
参道を戻れば、名物のいなり寿司や豊川の菓子・工芸を商う店がならびます。
ベストシーズン
豊川稲荷は特定の旬のない通年のお参りどころで、境内と門前の通りを歩くのが訪ねる時間の多くを占めるため、どの季節でも向いています。いちばん混むのは正月——大勢が初詣に訪れます。春と秋は歩きやすく、真夏は開けた境内が暑くなるため、早めの時間がやさしいでしょう。御本殿など主要な堂は総門より開いている時間が短いため、夕方に訪れる前に時間を確かめておくとよいでしょう。
行き方
- JR豊川駅(飯田線)徒歩約5分。豊川へは名古屋から豊橋で飯田線に乗り換えて向かえます。
- 名鉄豊川稲荷駅(豊川線)山門まで徒歩約5分。
- 車寺の近くに有料駐車場があります。詳細は公式でご確認を。
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