
ほうじ茶と抹茶、何が違う? 同じ葉が“焼く”だけで別のお茶になる話
文: Trip Japan YLP 編集部発行:Trip Japan YLP
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こんにちは!
旅館に泊まったことのある方なら、たぶん一度は「あれ?」と思ったことがあるんじゃないでしょうか。夕食が終わって、お皿が下げられて、最後にすっと出てくる茶色いお茶。紅茶が間違って出てきたわけじゃないんです(正直、私も最初はそう思いました)。あれ、緑茶なんです。見た目だけ、まったく別物になっているだけで。
その正体がほうじ茶。ここ数年、海外で抹茶ラテを飲んでいる方にこそ、その“反対側”にいるこのお茶を紹介したいと思います。
同じ葉っぱなのに、まったく違う道を歩く
以前、抹茶と煎茶がどう分かれていくかを書きました。抹茶は日陰で育てて、挽いて粉にして、まるごと点てて飲むお茶。煎茶はふつうに日を浴びて育って、葉のまま淹れるお茶でしたよね。ほうじ茶はその煎茶側から始まります。多くは煎茶や番茶(少し遅く摘んだ、大きめの葉っぱのことです)、あるいは茎の部分を、強い火でガッと焙じたもの。
ここがちょっとおもしろいところで。あの茶色、じつは酸化とはまったく関係ないんです。緑茶が紅茶になっていく過程は酸化の話だと以前書きましたが、ほうじ茶はその工程をまるごとすっ飛ばします。葉は酸化しないまま。茶色にしているのは発酵じゃなくて、火。似たような色になるのに、たどっている道はぜんぜん違うんです。
なぜ茶色くて、あの香ばしさなのか
高温で焙煎すると(だいたい160℃〜200℃くらいと言われています)、トーストを焼いたりコーヒー豆を焙煎したりするのと同じ化学反応が起きます。メイラード反応というやつです。これが葉を茶色くして、同時に「ピラジン類」という香りの成分をたくさん作り出す。あの香ばしい、ちょっとキャラメルっぽい、焼き菓子みたいな香りの正体です。緑茶が青々しくて海苔っぽい香りだとしたら、ほうじ茶はオーブンから出てきたばかりのパンみたいな香り。ぜんぜん違う顔ですよね。
ほうじ茶が生まれたのは昭和初期、1920年代ごろ。京都のお茶屋さんが、売れ残ったお茶をもったいないと焙じて売り出したのがはじまり、と伝わっています。真偽のほどはさておき、「ふつうの葉っぱをおいしく変える工夫」というこのお茶の性格を、よく表しているエピソードだと思います。
カフェインは、どうなの?
「ほうじ茶はカフェインが少ない」ってよく聞きますよね。ただ、正直に言うと、具体的な数字で言い切れるほど、調べた資料がきれいに一致しないんです(数字を出すと逆に誤解させそうで、ここではあえて出しません)。ただ理屈のほうは納得できて、焙煎の高温でカフェインの一部が飛ぶこと、そして原料に番茶や茎など、もともとカフェインが少なめな部分を使うことが多いこと。この二つが理由だと言われています。抹茶はその逆で、いちばん若くて、日陰で育った、カフェインが濃い部分を、粉ごと飲んでしまうお茶ですから。
数字がどうであれ、実際の使われ方を見ると納得します。ほうじ茶は夕食のあとに出てくるお茶ですし、子どもに飲ませるときも、日本ではわりと気にせず出すお茶なんです。
日本のどこで出会うか
意識してみると、ほうじ茶ってほんとうにあちこちにいます。旅館の夕食のあと。自動販売機やコンビニのペットボトル。ここ数年は、カフェのほうじ茶ラテやほうじ茶ソフトクリームとしても見かけるようになりました。台湾では焙茶拿鐵(ほうじ茶ラテ)がドリンクスタンドの定番メニューになっていて、日本に来る前にそちらで出会う方も多いかもしれません。
海外でも、ちょっとした注目のされ方をしています。英語圏の食メディアが「hojicha is the new matcha(ほうじ茶は次の抹茶だ)」なんて言い方を最近よく使うようになったんです。見出しの言葉として鵜呑みにする必要はないですが、抹茶が独占していた会話の場に顔を出すようになったのは事実みたいです。背景には、2025年から2026年にかけて抹茶の原料(碾茶)の供給が追いついていないこともあると言われています。需要が急に増えて、育てる側が追いつかない状態。その点、ほうじ茶はふつうの葉から作れるので、いわば控え選手として出番が増えている、というわけです。
どっちを買って帰る? 家でどう淹れる?
抹茶は、ちょっと手間がかかります。茶筅がいるし、粉は湿気に弱いし、ダマにならないようにコツもいる。それに対してほうじ茶は、ほぼ何もいりません。お湯を注いで数分待つだけ。失敗しにくいし、お手頃だし、袋がぺたんこになるのでスーツケースにも収まりやすい。お茶道具を持っていない相手へのお土産としては、ほうじ茶のほうが気楽に渡せると思います。
ちょっとおもしろい小ネタもひとつ。ほうじ茶は家でも作れるんです。少し古くなった煎茶を、乾いたフライパンで弱めの中火にかけて、菜箸でかき混ぜながら茶色くなるまで炒る。だいたい20分くらい、と紹介しているレシピが多いです。キッチンが香ばしい匂いになってきたら、それがもうほうじ茶。日本で買ってきた煎茶で、帰ってから試してみるのも楽しいと思います。
静岡の川根のような茶どころに足を運ぶと、この話がすとんと腑に落ちます(日本のお茶どころをまとめた記事もどうぞ)。同じ畑で摘んだ同じ葉っぱが、そのあとどう手をかけるかで煎茶にもなれば、ほうじ茶にもなる。一つの山あいから、まったく違う二つのお茶が生まれるわけです。抹茶についてまだよく知らないという方は、抹茶とは何かから読んでみてください。
抹茶が日本茶の“よそ行きの服”だとしたら、ほうじ茶は家に帰ってからの部屋着みたいなもの。今度、日本で食事のあとに茶色いお茶が出てきたら、「あ、これがほうじ茶か」と、きっとにやりとできると思います。
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