
お茶にも旬がある。春の一番茶から、真夏の水出し、秋の熟成まで
文: Trip Japan YLP 編集部発行:Trip Japan YLP
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こんにちは!
これを書いているのは、まさに真夏のまっただ中。名古屋はいつもどおり、暑い、じめじめ、容赦なし…です。そんな今、うちの冷蔵庫でいちばんうれしい存在が、一度も火にかけていない緑茶なんです。茶葉と水を入れて、ひと晩置いただけ。もし緑茶って熱いものしか飲んだことがないという方がいたら、この冷たい一杯は、お茶のまったく別の顔への入り口になりますよ。
そう、実は日本茶には「旬」があるんです。春に大好きだったあの茶葉が、8月にはまるで別の飲みものに感じられる。今日はそんな、お茶の一年をいっしょに追いかけてみましょう。
春。一番茶と、ずっと昔からの言い伝え
お茶の一年は「一番茶」から始まります。その年いちばん最初の収穫ですね。茶の木は冬のあいだ、じっと甘みをためこんでいて、春にようやく新芽が出てくるころには、そのうまみがぎゅっと詰まっているんです。この最初の摘みが「新茶」になります。みずみずしくて、青くて、ほんのり甘くて——そして現れたと思ったら、あっという間に去っていく。
お茶の世界がそわそわしながら待つ日があります。「八十八夜」。立春(暦のうえでの春の始まり)から数えて八十八日目、だいたい5月の頭あたりですね。このころに摘んだお茶には、すてきな言い伝えがあって。「これを飲むと一年、無病息災で過ごせる」というんです。信じる信じないは別として(笑)、新茶がお茶のいちばん生き生きした姿なのは、ほんとうです。
初夏。二番茶
6月ごろになると、茶の木はまた新しい芽を伸ばします。これが「二番茶」。一番茶よりちょっとだけ力強くて、繊細さは少し譲るぶん、たくましい。日常のお茶、一年を通してペットボトルや急須をいちばん満たしているのは、じつはこの子なんです。ロマンは控えめ、頼れる感じ。私、けっこう好きなんですよね。
真夏。冷たい一杯
さて、冷蔵庫のあの水出しに戻りましょう。ここにちょっとした魔法があるんです。緑茶をお湯じゃなくて水でゆっくり出すと、同じ茶葉から、まったく違う一杯が生まれる。苦くてシャキッとした成分——カテキンやカフェイン——は、冷たい水だと引っこみ思案で、葉っぱのなかにほとんど残ったまま。かわりに出てくるのが、甘くてうまみのある側なんです。だから水出しの緑茶は、まろやかでやさしくて、同じ茶葉をお湯で出したときよりカフェインもぐっと穏やか。
35度の昼下がりに、これ以上さわやかなものを私は知りません。ポットに茶葉と水を入れて、冷蔵庫で数時間。ほんとうに、それだけ。一度やってみると、夏がちょっと変わりますよ。
秋。時間をかけて落ち着いたお茶
そして、たいていの人が見落としがちな、とっておきの話を。あの春のみずみずしいお茶、じつは全部が春に飲まれるわけじゃないんです。ひんやり静かなところで何か月も寝かせて、角がとれてまろやかになった秋に、そっと出してくる。「蔵出し」ですね。若さゆえのとがった青さが、深くて穏やかな味わいに落ち着いていく。春の収穫が、ちょっと大人になった姿です。夜がひんやりしはじめたころにぴったりの一杯なんですよ。
というわけで、急須のなかの一年。春のはやる一番茶、どっしり頼れる二番茶、真夏のひんやりしたうまみ、そして秋の静かな深み。ひとつの木が、四つの表情を見せてくれる。
ここまで楽しんでいただけたなら、これまでの回もどうぞ。そもそもお茶はどうやって日本にやってきたのか、煎茶と抹茶はどこで道が分かれるのか、そして一枚の葉っぱがどうお茶になるのか。さしあたって今週、ひとつだけ試してみてください。茶葉と、水と、ひと晩。冷蔵庫でいちばんおいしいもの、きっと更新されます。それではまた。
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