
日本茶はどこで生まれる? お茶の産地をぐるっと一周してみた
文: Trip Japan YLP 編集部発行:Trip Japan YLP
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わりと最近になって、へえ、と思ったことがあるんです。同じ「煎茶」と書いてあるお茶でも、飲みくらべると別の飲みものみたいに味が違う。片方はやわらかくて甘い、もう片方はキリッとしてちょっと渋い。で、その違いって、じつはブランドの差じゃなくて「どこで育ったか」だったりする。
日本は、暖かい南のほうから、冬の寒さでお茶がぎりぎり育つ北の端っこまで、あちこちでお茶をつくっています。産地ごとに土も、山のかたちも、つくり方のクセも違う。だから今日は、順位づけじゃなくて「どこで、どんなお茶ができるのか」の地図を、いっしょにぐるっと見て回りましょう。
はじめてでピンとこない方は、まず日本茶の歴史と、煎茶と抹茶はなぜこんなに違うのかをどうぞ。今日のテーマは「場所」の話です。
静岡:やっぱりの大御所
日本茶にふるさとがあるとしたら、それは静岡でしょうね。ずっと昔から、生産量は国内でいちばん。富士山と海のあいだに、お茶畑がずーっと広がっています。斜面にきれいな緑のうねが並んで、うしろに富士山がぽっかり——あの風景、だいたい静岡です。
でも「静岡の味」がひとつかというと、そうでもない。牧之原みたいな日当たりのいい平らな台地では、どっしりした毎日の煎茶ができます。いっぽうで、川根みたいに大井川の谷ぶかくに登っていくと、お茶がガラッと変わるんです。空気はひんやり、朝は霧、急な棚田を手で育てる。葉っぱはやさしく、香り高くなって、静かな午後にとっておきたい一杯になる。同じ県なのに、まるで別のお茶。おもしろいですよね。
京都・宇治:昔からの名人
静岡が「量」のふるさとなら、いいお茶の作法がだいたい生まれたのが、京都のちょっと南、宇治です。ここは歴史が深い。何百年もお茶をつくってきて、抹茶や玉露のもとになる「覆い(おおい)をかけて育てる」技も、このあたりの生まれ。摘む前の数週間、日をさえぎって育てると、葉が濃い緑になって甘くなり、渋みがやわらぐんです。
宇治のお茶は、飲むと歴史の味がする、なんて言ったら大げさかな(いや、ほんとにそう感じます)。上等な玉露は、朝のゴクゴクとはまるで別物で、だしみたいにゆっくり味わうもの。お値段もそれなり。もしちゃんと一杯いただける機会があったら、ぜひ逃さずに。
西尾:名古屋のおひざもとの抹茶どころ
これはうちの地元の話。愛知の西尾は、じつは日本でも指おりの抹茶どころなんです。それも、あまり自慢げにせず、しれっと。矢作川ぞいにお茶畑が広がっていて、ラテに点てたり、お菓子に混ぜたり、アイスにふりかけたり——そういう身近な抹茶のかなりの部分が、このへんでできています。
わたしが西尾を好きなのは、宇治みたいに有名じゃないところ。観光バスなんて一台もいない抹茶の里に、ふつうに立っていられる。中部を旅していて緑のお茶が好きなら、あなたのカップの抹茶、名古屋から車でちょっとの畑で育ったのかも——って知っておくと、ちょっと楽しいです。
鹿児島:ぐんぐん来ている新星
九州のいちばん南、鹿児島は、いつのまにか国内屈指の大産地になりました。なにせ暖かいので、シーズンの立ち上がりが早い。鹿児島の新茶は、毎年いちばんに店先に並ぶことも多くて、涼しい産地より何週間も先だったりします。
こちらは今どきのお茶どころ。広くて平らな、機械で育てやすい畑で、飲みやすい安定した味に仕上げるものが多い。最近、まろやかで緑のこい毎日の煎茶を飲んだなら、そのお茶、鹿児島生まれの可能性はけっこう高いですよ。
狭山、そして北の端で
こんどは北へ。東京の近く、埼玉まで上がると、狭山にたどりつきます。お茶がなんとか育つ、ほぼ北限。ここのお茶の木は、ほんものの冬をこらえないといけない。昔から「色は静岡、香りは宇治、味は狭山」なんて言われて、収穫は少ないぶん、こっくり濃い一杯になる。地元じまんの「狭山火入れ」という仕上げの火が、それを後押しします。
もちろん、まだまだあります。覆いをかけた三重のかぶせ茶、福岡・八女の玉露、全国の小さな名産地たち。そこが楽しいんですよね。産地を気にしはじめると、袋に書かれた一語が、ただの名前から「土地」に変わってくる。
で、どれを飲めばいいの?
正直に言うと——ぜんぶ、ゆっくり順番に。それがいちばん楽しい学び方だと思います。次に日本でお茶を買うときは、袋をひっくり返して産地を見てみてください。静岡、宇治、西尾、鹿児島、狭山。その山のことを少しだけ思いながら飲む。季節でならべて楽しみたいならどの月にどのお茶が合うかへ、つくり方が気になったら一枚の葉がお茶になるまでへ、どうぞ。
わたしたちは名古屋が拠点なので、どうしても西尾びいき。でも、地図をまるごと飲んで回るのも大歓迎です。どこかのお茶どころで、湯呑み片手にお会いしましょう。
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